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カーシェアリング:成長市場・新ビジネスモデルレポート

2010 年 2 月 15 日 3:00 PM

~カーシェアリング~

■ 所有から利用への流れ
 近年では法人向け商品・サービス、個人消費ともに「所有から利用へ」の流れが加速化している。例えばITの領域では、ハードウェアや自社及びベンダー開発のソフトウェア投資が減少し、代わってSaaS(Software as a Service)、アウトソーシング、クラウドサービスの市場が拡大している。特に法人ではリース会計基準の見直しにより、リース設備が資産計上となってしまう財務上の懸念も影響している。
 個人向けの自動車販売を取り巻く環境も現在大きな変革期に差し掛かっている。以前は家計の支出の中でも大きな割合を占めていた車の所有コストは、先の見えない景気低迷により真っ先に削減対象となりやすい。旅行先でのドライブや引越しなど必要な時に都度借りるレンタカー市場は既に顕在化しているが、最近ではカーステーションに配置された車を登録した会員だけが共同利用(シェア)できるカーシェアリングが都市の一部でサービス化されている。

■ カーシェアリングの仕組み
 ユーザーになるためには、まずは事業者のホームページ等で免許証やクレジットカードの情報を入力し会員登録を行う。車を利用する時は、パソコンや携帯電話からインターネットを介して予約を行い、ICカードやおサイフケータイ機能を持った携帯電話をカーステーションに駐車してある車両の認証機にかざし、キーを解除する。
 料金体系は各社様々だが、通常は初期登録費用と月数千円の定額料金、距離もしくは時間に応じた従量課金を後日クレジットカードで支払う。必ずしも同じカーステーションに返却する必要はなく、レンタカーの「乗り捨て」感覚で別のカーステーションへ返すことも可能となっている。その際、レンタカーのように乗り捨て料金が別途徴収されるということはない。また、ガソリンを満タンにして返却するといった手間がないため、気軽に利用できる。
 用意されている車両は、現状は運営企業側が負担できるコストに合わせて軽自動車や小型車など排気量が小さい(1,000cc前後)ものが多い。ただし事業者によっては集客効果やエコ効果のイメージアップを狙っているためか、高級車やハイブリッド車、電気自動車(EV)車が利用できるサービスも提供している。

■ 需要背景、市場成長性
 カーシェアリングを利用するユーザーのメリットとして、第一に消費者側の「割安に車を利用したい」という経済性が大きい。車を所有すると、車両本体代、車検費用、修理及び交換部品代、保険料、車両税、駐車場代、ガソリン代など、トータルな費用では大きな負担になる。またバブル以降の世代は、ローンを組んで新車を購入することは借金に対する心理的抵抗が前世代と比較すると強い。
 利用頻度や距離、時間により一概には言えないものの、カーシェアリングユーザーは、車を所有した場合に比べて支出額を抑えられる可能性がある。特に抑制効果として大きい要因は、これまでのように自宅に隣接した駐車場ではなくカーステーションまで取りに行く「不便さ」が、自動車利用そのものを見直す材料となり、結果的に無駄な自動車利用を抑えられる。
 他にはユーザーの環境意識の向上に加え、非接触ICカードデバイスの普及もカーシェアリング市場の形成の一助となっている。通勤定期や切符購入の代替として台頭している交通カード、またスーパーやコンビニなどで利用可能な電子マネー決済カードは、現在急速に発行枚数を増やしている。携帯電話にも非接触ICタグが埋め込まれている端末が数多く発売されており、カーシェアリングの利用のために特別なデバイスを持つ必要はなくなっている。
 海外に目を向けると、カーシェアリング市場は日本よりもはるかに先を進んでおり、スイスのMobility Car Sharing Switzerlandは約8万会員(2008年9月時点)、アメリカのZipcarが32万会員(2009年12月時点)と、日本より市場の立ち上がりも規模も大きい。

 中堅・大企業のビジネスモデル
 カーシェアリング事業者のビジネスモデルは各社によって多少相違がある。大手資本が母体となっている事業者は、既存事業の相乗効果を狙った展開をしているパターンが多い。

<既存の車両ビジネスの延長による事業展開>
・ オリックス自動車(プチレンタ)
 オリックスレンタカーの事業基盤をベースとしており、国内では最大手の事業者となっている。既存のレンタカー事業では、車両調達ではメーカー系レンタカー事業者と比較するとコスト面で優位性を築きにくい状況であったこともあり、差別化のために1999年よりカーシェアリング事業を先駆けて開始した。なおカーシェアリングではレンタカー事業とは異なり、ユーザーのクレジットカード登録が利用条件となっているため、個人向け金融事業に強みを持つオリックスグループの顧客囲い込み施策として適合しており、将来的にサービスを組み合わせて展開できるポジションにある。

<駐車場ビジネスとのシナジー>
・ パーク24(カーシェア24、旧マツダレンタカー)
 マツダレンタカーもオリックス自動車と同様、他のメーカー系レンタカー事業者よりカーシェアリングへの参入は早かった。ただし2009年3月にパーク24が同社の買収を発表し、コインパーキング事業とのシナジー効果を狙うビジネスモデルへと変化した。コインパーキング事業者としては、カーステーションの候補地を駐車場として既に多数所有していることが最大の強みとなり、拠点を一気に拡大できるポテンシャルがある。

<マンション販売の集客ツール>
・カーシェアリング・ジャパン株式会社(カレコ、三井物産グループ)
 売り出し中の都内新築高層マンションは、不動産ディベロッパーがマスメディアに多額なプロモーションコストをかけて販売しているが、その販促の一貫としてカーシェアリングを集客ツールとして利用しているケースがある。三井物産グループのリソースでマンションオーナー向けや駐車場オーナー向けの営業活動が可能であり、また同時にカーシェアリング利用によるコスト削減を法人向けに提案できる。三井不動産のコインパーキング事業や新築マンションにも事業展開をすることができる。

表1.中堅・大手企業のカーシェアリング事業者一覧(2010年2月時点、順不同)

サービス名 事業主体 ビジネスモデル
プチレンタ オリックス自動車 オリックスレンタカー事業の基盤を活用。個人向けクレジットカード事業など、本業との相乗効果あり。
トヨタカーシェアクラブ 株式会社トヨタレンタリース東京 トヨタレンタカー事業の基盤を活用。
カーシェアリングクラブ 株式会社日産カーレンタルソリューション 日産レンタカー事業の基盤を活用。
ecoレン太 JR東日本レンタカーリース株式会社 駅レンタカー事業の基盤を活用。suicaをキーとして利用可能。
カーシェアリングサービス エコ乗りくらぶ JR西日本レンタカー&リース株式会社 駅レンタカー事業の基盤を活用。旅行業とのシナジーもあり。
カーシェア四国 株式会社駅レンタカー四国 駅レンタカー事業の基盤を活用。旅行業とのシナジーもあり。
エコロカ 日本駐車場開発株式会社 コインパーキング事業の基盤を活用。
カーシェア24 パーク24株式会社 マツダレンタカーを買収。コインパーキング事業の基盤を活用。
カレコ カーシェアリング・ジャパン株式会社 三井物産グループ。新築高層マンションへの導入。
UPRカーシェアリングシステム ユーピーアール株式会社 物流の遠隔監視事業を活用。カーシェアリングシステムの外販。
カーシェア金沢 北星産業株式会社 北陸拠点、ガソリンスタンド事業の基盤を活用。
カーシェアメイト 株式会社ガリバーインターナショナル レオパレス21と提携。賃貸マンション事業と合わせて千葉県市川市、浦安市を中心に展開。
アウディプレミアム カーシェアリング 住友不動産株式会社 アウディ ジャパンと提携、アウディの車両をカーシェアリングで利用可能。

■ ベンチャー企業のカーシェアリングビジネス
 一方で小資本のベンチャー企業では、機動力や創意工夫を最大限活かした事業展開をしている。事例としてはカーシェアリングシステムの部分的なインフラ提供やカーシェアリングマッチング情報提供、フランチャイズ展開などを積極的展開している企業が存在する。

<CtoCの個人間カーシェアリングモデル>
・ 株式会社ブラケット(CaFoRe)
 CaFoReでは個人所有の自動車を個人へ貸し出すCtoCモデルのカーシェアリングの情報マッチングサービスを提供している。既存の個人の所有車と駐車場が、そのまま貸し出し用の車両とカーステーションとなるため、登録人数が増大すれば一気に場を牽引する可能性がある。また、大部分のレンタカーやカーシェアリング事業者が提供する小型車だけではなく、個人所有の7-8名乗りのワンボックス車や高級外車の貸し出し情報も多く掲載されていることが特徴となっている。

<フランチャイズシステム化>
・ 株式会社レンタス(ニコニコレンタカー)
 通常のカーシェアリングのビジネスモデルとは異なり、格安レンタカーという位置づけの市場だが、カーステーション拠点の増加やコスト削減のニーズが強いユーザーを対象としたサービスと考えると、カーシェアリング市場と同じ顧客層をターゲットとしていると見ることができる。車両に詳しいガソリンスタンドのスタッフによって整備された中古車を貸し出し車両とすることにより、低価格でレンタカー事業運営が可能となっている。それだけではなくガソリンスタンドの施設基盤を活用したレンタカー認可の取得、給油事業の人件費との共同固定費化、レンタカー返却の際の給油売上が見込めるなど、運営側にとってもメリットが大きい。フランチャイズの本部としては、予約システムの提供をすることによる集客サポート、レンタカー免許取得支援や中古車斡旋など、ガソリンスタンド単体では持っていないノウハウの部分を提供している。

表1.ベンチャー企業のカーシェアリング事業者一覧(2010年2月時点、順不同)

サービス名 事業主体 ビジネスモデル、特徴
CaFoRe 株式会社ブラケット CtoCのソーシャルコミュニティを基盤としたカーシェアリングの情報提供サービス
ニコニコレンタカー 株式会社レンタス ガソリンスタンドへ中古車を利用した格安レンタカー事業をフランチャイズ展開
バリューレンタカー 株式会社ITサポート21 ガソリンスタンドへ中古車を利用した格安レンタカー事業をフランチャイズ展開
コミューカ コミューカ株式会社 東京都世田谷区、目黒区を中心に展開、ハイブリッド車を複数車配置
ウィルカ 株式会社ビィーアール 大阪を拠点としてカーステーションを展開、月額費用0円のプランあり。
クイッカー 株式会社ディズム カーシェアリングシステムの外販、東京都内での自社カーステーションによる事業展開
ウィズリー クレアティー・サービス株式会社 集合住宅向けへのカーシェアリングシステムの導入を事業展開
カテラ 株式会社アスク マンションへのカーシェアリングシステムの導入展開
カーシェアリングシステム 株式会社サージュ カーシェアリングシステムの開発
エブリカ 株式会社エブリカ 大阪を拠点としてカーステーションを展開、カーシェアリングシステムの外販もあり
シェア・カ シェアリング・インベストメント株式会社 自転車シェアリング、オフィスシェアリングなど複数のシェアリングビジネスと組み合わせて提供

 ■ 想定される利用シーン
 カーシェアリングユーザーの利用形態はまだ明らかになっていない。想定されているのは、雨の日や大きいものを買う時のショッピング、通院、家族の送迎といった、短時間及び短距離の利用が中心と考えられている。宿泊を伴う旅行や距離が長いドライブ、トラックなど特殊車両を利用する引越し等はこれまで通りレンタカーの利用がされるものと思われるが、今後はユーザーの使途によってサービスの使い分けがされていくと考えられる。

■ ベンチャーがカーシェアリング市場を勝ち抜くための課題
 法規制面では、カーシェアリング事業そのものを行うためにはレンタカー事業の認可を国土交通省から法人として受ける必要がある。この認可そのものはそれ程ハードルの高いものではなく、参入障壁にはなりにくい。
 大手企業が展開している通常のカーシェアリングのビジネスモデルでは、カーステーション設置のための土地オーナーとの交渉力、車両の調達力、ITシステムへの投資余力、集客の販促費の資金が成長ファクターとなり、ベンチャーが大手企業と正面から競争することは難しい。また大手企業では既存事業との相乗効果を狙った二次的ビジネスと位置づけ、そもそもカーシェアリング事業単体での収益化を目的としていないケースもあり、まともに戦うことはリスクが大きい。

 ベンチャーではどの系列にも属さない独立資本であること、また軽いフットワークを活用した事業展開が強みとなる。カーシェアリングシステムのプラットフォーム及びノウハウの部分的提供やフランチャイズ展開、集客機能に特化したサービス、ソーシャルネットワーク等のコミュニティを基軸とした登録会員を獲得、顧客の要望を即時サービスに反映させるためにカスタマーサービス強化施策といったビジネスモデルを事業ドメインに加えていく。スピード面と顧客満足、サービスの高速改善で成長市場をうまく捉え、大手企業と差別化していくことが重要となる。

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